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暮らしを支える現場を、グループで支える
──陵南が手に入れたもの

2025年4月、関西電力の送電・変電設備の保守を担う株式会社陵南は、リライフメンテホールディングス(以下、RMHD)グループの一員となりました。
現場一筋で歩んできた会社にとって、「M&A」は決して身近な言葉ではありません。
グループインから約1年半。現場をけん引するお二人、送電グループの中山隆さんと、変電グループの森和義さんに、率直なところをうかがいました。

対談者紹介

  • 株式会社陵南
    送電グループ 部長

    中山 隆 氏

  • 株式会社陵南
    変電グループ 部長

    森 和義 氏

正直に言えば、不安のほうが大きかった

グループインの話を聞いたとき、よぎったのは不安でした。「最初は、期待というより『これからどうなるんやろう?』のほうが大きかったですね」と中山さんは振り返ります。関西の、十数人ほどの自分たちのような小さな会社に、東京の企業からなぜ声がかかったのか。戸惑いは小さくありませんでした。
森さんの受け止め方は、少し違いました。「M&Aそのものに驚きはありませんでした。会社を残すための決断だろう、と。ただ、小さな所帯ですから、“良いものは残っても、そうでないものは切られるのでは”という不安は正直ありました」。これまでのように情を汲んでもらえるわけではなく、大きな会社の一員になれば、物事は合理的に、そして素早く決まっていく。これまで自分たちが積み上げてきた陵南ならではのやり方や良さが、その流れのなかで切り捨てられてしまうのではないか。森さんは、そんな戸惑いを率直に口にしました。

いちばん変わったのは「人を育てる仕組み」

1年半を経て、お二人が声をそろえたのが“人材育成の考え方”の変化でした。「以前は、自分の作業をこなしながら『背中を見て覚えろ』でした。目の前の仕事を回すだけで手一杯で、じっくり教える時間まではなかなか取れませんでした」グループインを機に、育成が独立した仕事として位置づけられ、教育の機会も費用も用意されるようになりました。「新入社員をどう育てるか、きちんと考えられるようになった。先が見えるようになりました」以前の陵南では、目の前の仕事に追われ、人を育てることにまで手が回りませんでした。それが変わったのは、グループインをきっかけに、育成に取り組むための時間や体制が整えられたからです。森さんはこの変化を、「(RMHDに)うまく仕向けてもらった、という感じですね」と笑います。「意識してそうなったというより、育成に向き合える余裕を与えてもらった。その余裕があるかどうかで、育成の仕方は大きく変わります」育成は、いわば一つの“プログラム”として形になりつつあります。とはいえ、その中身、具体的な進め方やマニュアルは、まだこれから。「やらなければならないことが山ほどあります」と、新しい課題をお二人とも前向きに受け止めていました。 採用でも、これまで手の回らなかった面接やフォローを、RMHDが支援するようになりました。もともと陵南は、定着率の良い会社です。ただ、会社が大きくなり、新入社員を受け入れるペースが上がれば、組織には今までと違う変化も生まれます。そこで、入社して1か月、3か月といった節目で面談を挟むなど、新しいメンバーへのフォローアップが加わりました。良かったものを継続しながらさらに良いものへ引き上げていく。採用のペースが上がっても定着率はしっかり保たれ、その手応えが次の一手につながっています。

視座が上がり、“会社として”先を描けるように

「1年ごとに、仕事があるかどうか。先が見えないのが、いちばんの不安でした」と中山さん。受注が読みにくいなかで、先の見通しを立てるのは簡単ではありませんでした。 森さんも、同じ実感を口にします。「仕事がない時が、いちばん不安なんです」。かつては目の前の案件をこなし、会社を維持することに精一杯。“会社として”先を考える習慣そのものが、なかなか持てませんでした。それが、いまは大きく変わったといいます。RMHDが事業計画づくりに加わり、数年先の数字や会社の絵姿を一緒に描いてくれるようになりました。おかげで、5年、10年先のビジョンを見据え、会社としてどうなっていきたいかを考えられるようになっています。ただ現状を維持するのではなく、先を見据えて動く。発想そのものが切り替わりつつあります。「一人で抱えて考えることが、なくなりました。少し先を走って道をつけてくれる、伴走してもらっている感覚です」と森さん。目の前の一年だけを追うのではなく、数年先の景色を見ながら進む。その手応えが、日々の仕事を支えています。

働き方と待遇の見直し

待遇の面でも、変化がありました。評価制度の導入で、評価や処遇の仕組みが整い、頑張りや役割がきちんと処遇に反映されるようになってきています。制度そのものの見直しも進んでいます。「ここで終わりではなく、これから毎年、もっと良くなっていくはずです」目の前の一年だけでなく、数年先を見据えた仕組みづくりが動き始めています。 その評価制度は、現場の空気も少しずつ変えつつあります。これまでは、無事故で工事を収めて当然という世界。きちんと成果を出しても、あらためて光が当たる機会は多くありませんでした。「うまくいって当たり前、という受け止めでしたね」新しい制度では、上司と具体的な目標を握り、頑張りや工夫がきちんと評価される仕組みが整いはじめています。「若い子も含めて、良い時にはちゃんと褒めてもらえる。それは、いいことだと思います」言われた作業をこなすだけでなく、自分から一歩踏み込んで提案する。そんな前向きな姿勢が生まれる土壌ができつつあると森さんは語ってくれました。

業務のデジタル化も、始まっている

働く環境の面では、業務のデジタル化(DX)も始まっています。新しい仕組みを次々に導入している最中で、「正直、いまはまだ慣れるまでの負担も小さくありません」と中山さん。まずは「やり方そのものを見直す」段階だからこその過渡期です。それでも、この新しいやり方が現場に定着すれば、次は効率を高めていくフェーズへと移っていきます。「大変なのは今だけ。ここを越えれば、ぐっと楽になるはずです」目立たないところで、着実に土台が整いつつあります。

変わらなかったもの、守られたもの

変わらなかったものもあります。少人数ならではの風通しのよさ、役職を越えた横のつながりは、グループインしてからも変わりません。新しい仲間やグループ各社のメンバーとも、自然に打ち解けているといいます。 そして、現場のやり方や安全へのこだわりは、これまでどおり陵南のプロとしての領域として尊重されています。「そこは私たちの本分です。お客様の評価につながる品質と安全は、これまで培ってきたもの」と中山さん。会社が大事にしてきたものは、そのまま活かされています。森さんは「 むしろ変わったのは、若手の”立ち位置”かもしれません。RMHDグループという確かな基盤ができたことで、若手も安心して現場に立てるようになりました。会社が背中を支えてくれている。一人ひとりに、そんな感覚が生まれています」そう語ってくれました。 一方で、これまで陵南だけでは手が届かなかった領域もあります。その一つが、広報、仕事の魅力を社会に伝える発信です。送電・変電の現場は、暮らしを支えていながら、その本質がなかなか世の中に伝わってきませんでした。グループインを機に、現場に何度も足を運びながら、これまで表に出づらかった陵南の仕事を、PRとして届けていく取り組みが始まっています。現場のやり方はそのままに、その価値を外へ発信する部分を、RMHDが担う。そんな役割分担も生まれています。

これから取り組みたいこと

森さんが取り組みたいのは、送電も変電も、技術も管理も幅広くこなせる人材の育成です。そのうえで見据えるのは、“もう一歩上”に応えられる力だといいます。「これからの時代は、言われたことをこなすだけでは生き残れません。言われたことができるのは、当たり前。その先が問われます」。森さん自身、これまで求められた以上の期待に応えようと、考えながら現場に立ってきました。「たとえば、指示にはなくても『こちらのほうが安全で、こう変えたほうがいい』と提案できる。そういう一歩が、他社との差別化につながります」。求められたことに応えるだけでなく、期待を超える工夫を自発的にできる人を育てたい。それが森さんの思いです。
中山さんが見据えるのは、グループ各社をまたいだ若手同士の交流です。「うちは20人ほどの会社で、外の世界をあまり知らないまま育つ社員も多い。だからこそ、他社を知る機会を持たせてやりたいんです」。グループは、加わった当初の3社から、いまは5社へと広がっています。会社の垣根を越えて若手が行き来し、それぞれの現場の良いところを持ち帰る。そんな学び合いの場をつくりたいと語ります。「自社だけでは、なかなかできないこと。グループだからこそ、実現できると思っています」一人ひとりが外の刺激を受けながら成長していける会社へ。その土台づくりが、これからの挑戦です。

──取材を終えて

明かりを点ける。スマートフォンを充電する。
その何気ない毎日を、送電・変電の現場が陰で支えています。その使命は、グループインの前も後も変わりません。守るべきものは守りながら、変えるべきものを変えていく。人を育てる仕組みが根づき、働く環境が整い、会社として先を描けるようになった。そうして足腰を鍛え直した陵南は、これまで培ってきた誇りに、次の時代へ進むための跳躍力を得ました。暮らしを支えるその役割を、より力強く担っていきます。