意識も空間も生まれ変わる
──社員が創り上げた劇的 Before/After
社員主体で自社を創る挑戦。外部業者に頼らず、自社スタッフと共に社屋の大改装を完遂した舞台裏。
自ら大改装の陣頭指揮を執ったリーダーに、現代の若手スタッフを「戦力」にする哲学と、改装がもたらした企業変革についてお話を伺いました。
対談者紹介
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平世美装株式会社
統括工事本部 部長村上 厚 氏(以下、村上氏)
Summary
仲間と挑んだトップクラスへの道
──簡単な自己紹介と平世美装で働き始めた経緯までのお話をお聞かせください
村上氏:
前職は大手ゼネコンを顧客とした下請けの建築屋でした、木造建築から商業施設、ビル建設など、数々の現場を担当しました。
当時の下請けというのは労力に見合った評価がなかなかされず、厳しい納期や条件、更に現場は人手不足、
そんな中、無理がたたったのか、過労で現場作業中に倒れ、救急搬送され即入院。
ドクターから言われたのは「このままの状態で働き続けたら本当に体を壊しますよ」と忠告され、その時でしたね、長年働いてきた建築業から離れることを決断したのは。
その後、地元の繋がりということもあり平世美装で働くことになるのですが、
当時は技術にしても働く環境にしてもまだまだ課題が多く、整っていない状態。1か月経った時に、本当にここでやっていけるのだろうか?と悩んだこともありました。
ただ塗装という仕事には建築をやっていた頃から興味があった。何より、一緒に働く若手が活き活きとしていた。
「よし、ここで自分の培ってきたノウハウを合わせて、もっと良い会社にしてやろう」と思い、まずは、社長や専務の力も借りながら、社内を積極的に改革することから始めました。
スタッフ一人ひとりが技術の向上に真摯に向き合いながら、一つ一つの現場に懸命に取り組む事を重ねた結果、品質とスピードを両立できるまでに成長しました。
その甲斐あって、今となっては年間約400基もの送電鉄塔塗装工事を受注し、業界トップクラスになりました。
地上90m!鉄塔塗装のプロ集団
──ご担当されている業務内容を教えてください
村上氏:
普段の業務は東京電力さんの鉄塔の補修、塗装業務の責任者という立場で、今でも鉄塔に登って作業をしています。
──1基の鉄塔を塗装するには、何人位のスタッフが何日間位で塗装するのですか?
村上氏:
大体8人のチームで着手から4~5日間位で完了します。
──素朴な疑問なのですが、鉄塔ってどの位の高さになるのですか?
村上氏:
平均すれば50~60m 高いので90m位です。ビル30階相当の高さですからね、見晴らしは最高です(笑)
──怖くないのですか?
村上氏:
慣れてしまえば何でもないですよ、私の場合は前職でも慣れていましたし。
ただ高所で仕事をすることは常にリスクに晒されますからね、暑さ寒さといった気候的なリスクもそうです。だからこそ普段の健康管理もですが、何よりも安全管理は自分が中心となって徹底的に指導をしています。だからこそ創業以来これまで無事故・無災害を継続しています。

次代を担う若手スタッフを育てる極意
──スタッフを育てる立場で心掛けている事を教えてください
村上氏:
誰とでも分け隔てなく接するように心掛けています。普段から一緒にお茶して、食事して、タバコ吸ったりとか、まぁよく話しかけたりしますよ。
でも仕事の場ではバッチリと技術に差を付ける。そうする事で頼られるし何でも聞いてくれるようになりますね。
だから昔の職人みたい自分の方が立場は上という態度は決して見せないように、常にオープンにしています。
──若いスタッフを育てる事に難しさを感じる事はありますか
村上氏:
私の場合は、育成ではなくて、取り組む姿、背中を見せることが教育だと思っています。
監理技術者という立場ではありますが、上から物を言う事はしない。
特に今の若い人達は上からガミガミと言われることを嫌がるでしょう、それは理解しています。
だから私の場合はきちんとした技術を自ら見せて覚えてもらう事を意識していますね。
古いパチンコ店からのリノベーション
──最近社屋を自社スタッフで改装をされたと伺いました
施工管理を担当されている村上さんが陣頭指揮を執り施工されたとの事ですが、その経緯を教えてください
村上氏:
この社屋は元々廃業した古いパチンコ店だったんです。それを約20年前に居抜きの状態で当社が買取りました。
当初はパチンコ店の間取りそのままに、事務所も会議室も板で仕切る程度、書類や物が多い会社だけど収納もスペースも足りない状態
パチンコ店の名残りであった景品カウンターも棚として使用するような、そんな内装でした。
ですから、事務スペースも、収納も会議室も休憩スペースもそもそも無いような、そんな状態でした。
──改装前はどのようにされていたのですか?
村上氏:
社員が徐々に50名、100名規模と増えてくると、大きな会議スペースや研修スペースも必要になり都度、外部の施設を予約して、借りなければならない、安全衛生行事も大所帯になるとなかなか場所も確保できずに開催する事が難しくなってくる。
当時の状態では、働く上でのオフィス環境としては課題が沢山ありまして、私は元々が建築関係の仕事をしていた経験もあった事から、課題を解決する為にオフィスを大規模に改装するだけのノウハウはありました。
調査してみると見た目は古い建物ではあっても内部構造はまだまだ行ける状態、それならば自分たちでリノベーションした方が良いよねと社長の後押しもあり私がその役割を引き受ける形になりまして解体、設計、構造計算、資材調達、施工まで一連の作業の陣頭指揮を執りました。
嬉しいことに、若いスタッフが「村上さんから建築の技術を学んでみたい。」と自主的に参加してくれたのはありがたかったですね。
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改装前事務所風景
──内装、外装もすべて自社スタッフで施工されたのですか?
村上氏:
そうです。外注するとかなりのコストが掛かることは分かっていました。
でもうちは職人の集まりですから、自分達でできることは何でも自分たちでチャレンジしてみようと、そう考えました。例えば、屋上の床なんかは塗装、コーティングですから、それこそ同じ塗装の技術は活かせましたしね。

改装工事中風景
──これだけ広い社屋を大改装するにはかなりの期間を要したと思いますが、何年掛かりのプロジェクトだったのでしょうか?
村上氏:
いえいえ、2025年2月に始めて、10月には完成しました。
なので8か月間ですね。自分でも驚いていますが、プロの施工業者にも驚かれますね。8か月間ってミラクルだって(笑)


左:改装前外観 右:改装後外観
働く全てのスタッフが心身とも健やかに過ごせること
──今回のリニューアルの、こだわりは何でしょうか
村上氏:
やはり手入れがしやすいこと。
掃除しやすいレイアウトや材料を選んだこと、また、モノが溢れていた事もあり、整理整頓できるオフィスにしたいという要望もあり
インセット工法といった鉄骨構造の中に木造の骨組、インナーフレームを立て、新たな空間を作りました。
もともと大きな吹き抜けのあったパチンコ屋だったもので、無駄なスペースを持て余していました。
そこに木造のインナーフレームを立て新たに40畳程度のスペースを造り、それを書庫としたことで、広々としたゆとりある事務所が完成しました。
──なるほど、それも建築のノウハウが活かされているわけですね
村上氏:
そうですね、前職のノウハウやスキルは非常に活かせたと思います。
そもそも私自身、古いものを新しくするといった、例えばボロボロの自動車やバイクなんかをレストアしてピカピカにするみたいな事がとても好きで
そういう発想が塗装の現場にも今回の大改装にも通じるものはあると思いますね。

改装後事務所内観

新たに作られた大会議室
スタッフ同士の結束力強化に繋ぐ環境
──改装後、スタッフにもたらした変化など あれば教えてください
村上氏:
明らかにスタッフの意識が変わったと感じられます。以前に比べて整理整頓も自発的に心掛けるようになりましたね。
村上氏:
確実に増えましたね。つい先日も、ウェルカムパーティーを新たに作った100人入れる大会議室で開催しました。
その他でも、スタッフ同士が交流できるスペースも随所に作ってありますので以前に比べてスタッフ同士のコミュニティも増えました、
皆が快適に過ごせるリラクゼーションルームや宿泊できる施設も完備しましたし、
トレーニングルームも造る予定で、自然と結束力も強化される事に繋がったと感じています。
──働く環境を良くすることは定着率にも繋がりますね
村上氏:
はい、それはあると思います。コミュニケーションが良くなる事はモチベーションUPにも繋がり定着率も高くなりますね。
例えば、みんなで楽しめるイベントを企画したり、毎年スタッフ全員で旅行に行く事も企画しています。
社長も専務もスタッフが楽しめる企画を考えるのが好きなんですよ
来年は新幹線を貸し切りで大阪のUSJへ行くことも予定していて、みんな楽しみにしています。
──村上さん中心に色々と企画されるみたいですね
村上氏:
そうそう、自分で言うのもなんですが、村上建設でもあり、村上イベントでもあり、時には村上トラベルでもありますね(笑)
働く空間を整える事、それはひとつの通過点である
──リニューアルされた社屋で、新たな仲間を迎えていくにあたり 改めて村上さんの今後の目標を教えてください
村上氏:
働きやすい”空間”は用意出来ました、
これからはそれぞれのスタッフが自主的にコミュニケーションを深める事を学んで皆で協力し合い、
更に働きやすい”環境”を積極的に創って行って欲しい そう考えています。
私たちの仕事に重要なのはチームワーク。
コミュニケーション能力が養われることで、結束力は確実に上がると思っています。
そんな活気ある平世美装であり続けたいですね。
──貴重なお話をありがとうございました。
技術を結集し、廃業したパチンコ店だった社屋を自社スタッフで大改装。この共同作業は結果として、快適な働く空間を造り上げたと同時に、スタッフ同士の強い結束感を生みました。
この新たな拠点から、強固なチームワークを原動力に、スタッフ一人ひとりが鉄塔塗装に於けるスペシャリストとして、
老朽化が進む日本のインフラ再生という重大な課題に果敢に立ち向かうことが期待されます。