
社会インフラに挑む、異才の邂逅
──現場から未来を創るリーダーたち
橋や鉄塔、道路といった社会インフラの最前線で、見えない場所を支え続けてきた職人たちがいます。その中で「業界の常識を変える」という共通の志を抱き、ともに歩む二人の経営者――平世美装株式会社 代表取締役 久保田悟氏と株式会社infrat 代表取締役 飛鳥正文氏。今回は、そのお二人が共同で立ち上げたリライフメンテホールディングスグループについて、お話を伺ってまいります。
対談者紹介
-
リライフメンテホールディングス株式会社
共同創業者兼取締役 /
平世美装株式会社 代表取締役久保田 悟 氏(以下、久保田氏)
-
リライフメンテホールディングス株式会社
共同創業者兼取締役 /
株式会社 infrat(*注1)代表取締役飛鳥 正文 氏(以下、飛鳥氏)
*注1 株式会社NITTOは2025年4月から株式会社infratに社名変更しました。
Summary
職人の世界に育ち、現場で磨いた信頼と技術
職人の世界への扉
──まず、お二人のご経歴をお聞かせください。
久保田氏:
私は職人会社の息子として生まれ、父をはじめ、親戚もほとんどが塗装業を営んでいました。1970年代後半から1980年代当時は社会の雰囲気もおおらかで、小学生の頃から父の会社で仕事をしていました。だから、あまり人に雇われた経験がないんです。唯一のアルバイトといえば、千葉の牧場くらいで。
どちらかというと、当時から自営業というか、カブトムシを採って市場に持っていったり、山芋を掘ってそれを売りに行ったりしていましたね。
父は戦前生まれで、苦労の末に塗装業を立ち上げました。幼少期には建装工業の下請けとして新日鉄君津製鉄所の工事に携わっていました。高度経済成長期は順調でしたが、オイルショック後、父が保証人となったことで多額の借金を抱え、取り立てに追われる日々が続きました。拓殖大学紅陵高校に入学した頃に父の会社が傾き始め、私は2ヶ月で高校を退学し、そのまま父の会社に入りました。
その時、偶然父の会社が私の通っていた高校の塗装工事をやっていまして、高校を辞めた次の日に、自分の通っていた高校で塗装工として働くという、ある意味驚きの経験もありました。
そして私が22歳のとき、父の会社が倒産しました。
倒産して、2年くらいは弟と一緒に叔父の塗装会社を手伝っていましたが、ここにいると一生芽が出ないなと思い、兄弟二人で飛び出して独立しました。
最初はお客さんがいなかったので、手書きのパンフレットを住宅街で配ったり、父の付き合いがあった会社に営業をかけるなど地道な活動をしていました。
そして、600万円くらい資金が貯まったときに、「これはもう会社にしてしまおう」と思い法人化して平世美装を立ち上げたんです。そこから本格的に営業活動を始めました。
そのうち鉄塔塗装をやらないかと声がかかり、やり始めました。
当時は建装工業の仕事を請け負うのは敷居が高かった。それでも当時建装工業にいた飛鳥さんのところに足しげく通って。初めてお会いしたのが、平成11年ですね。最初はいきなり飛び込んでいって、「何者かな」と思われたって話もあって(笑)。
飛鳥氏:
そのとき私自身は建装工業にいましたが、まだ20代で。現場作業をしている自分に決定権はありませんでした。だから、「頑張っている人がいる」と言っても、自分が使うかどうかを決める立場でもありませんでした。
でもそこから20年以上のお付き合いになって。
当時鉄塔塗装をやる人間なんてほとんどいなかった時代に、パンフレットを持ってきてくれて、「こういう会社あるよ」って社内に触れ回っていた記憶があります。
久保田氏:
ちょうど平世美装を設立したのが平成8年4月です。
しばらく色んなところで鉄塔塗装の下請けの実績を積んでいて、平成11年に偶然隣の現場で建装工業が工事をやっていて、飛鳥さんに営業をかけまして。
それが最初の出会いでした。
飛鳥氏:
私は平成7年に入社して、3年目だったので、鉄塔の経験もそれなりに積んでいて、自信も付いてきたときですね。
──飛鳥社長のご経歴も伺ってもよろしいでしょうか。
飛鳥氏:
私は普通の家庭に生まれて(笑)
祖父が秋田県で塗装会社を立ち上げて、私の父はそこから修行で東京の塗料販売会社に入って、そのまま定年まで勤めました。
祖父の塗装会社とはそこまで深く関わりはなかったのですが、社長としての祖父やその後を継いだ伯父の姿を見ていて「かっこいいな」と憧れを持つようになっていました。
そんな憧れを持ちながら、高校、大学と進んだのですが、ちょうど就職氷河期で良い就職先が見つからず、困っていたときに伯父に相談しました。
すると、伯父が「日本で一番大きい塗装会社を紹介するよ」と言ってくれて、入社したのが建装工業でした。
そこから、東京電力さん向けの工事に関わるようになるのですが、入社して3日目でいきなり鉄塔の現場に行けと言われました。東京・五日市にある鉄塔の現場に、下請けさんと一緒に宿泊しながら行動しろと指示を受けました。
その現場で勉強することになったのですが、実はその下請けが今のinfrat──つまり、うちの会社でした。
それからは鉄塔専門みたいな感じで現場を施工管理するという仕事がずっと続いていきました。
そして、新古河線という現場の担当になりました。
新古河線は50万ボルトの鉄塔で、相当大きい鉄塔です。鉄塔をやっている身からすると、これはもうシンボルというか憧れというか……。
「こんな現場をやれるなんてすごいな」と思って、現場に着いたときから「やってやろう」という燃えるものがあったのは覚えています。
その現場に、隣の現場にいた久保田さんが営業に現れて(笑)。
久保田氏:
そう、ちょうど隣の現場で2次か3次の下請けで入っていまして……。
この業界というのはピラミッドの多重構造なので。
下請けから元請けへの転換
──なるほど。下請けから元請けになるには、かなりのご苦労があったかと思うのですが。
久保田氏:
この業界は本当に特殊で、元請けと下請けの役割がきっちり分かれています。
元請けっていうのは古くからの会社で、いわば管理会社的な立場。下請けはどれだけ力があっても、なかなか対等には扱われなかった。まるで“上級国民と下級国民”みたいな──そんな空気感さえありました。
発注側としても、「あくまで下請けは下請け」という線引きがあって、なかなか元請けと同じ土俵には上がらせてもらえない。でも僕たちは「そこに行きたい」「対等に渡り合いたい」って気持ちがありました。ただ、それを実現するのは簡単じゃなかった。
当時は日本の大手、特に建装工業のような会社は鉄塔関連の危険な現場では決まった下請け業者を使っていました。
千葉県は鉄塔のメッカですが、下請けルートが固定されており、なかなか食い込むことができない。それで私たちはあえて、そういうメインルートを避けて、他が目を向けないような地方や、建装工業が受注しない山奥の案件を取りに行きました。長野、新潟、群馬など、地方で実績を積んで、徐々に「平世美装って会社はすごい実力があるんじゃないか」とみんなが思い始めて、その後、東京電力からも評価されるようになっていった。
それでも、なかなか私たちみたいな会社が呼ばれることがなかった。やはり既存の体制などが見直されていなかったのだと思います。
ただ、そんなときに東日本大震災が起こりました。
震災の影響もあり、東京電力としても鉄塔塗装にかける予算を見直す必要が出てきました。それもあって「平世美装のようなコストも抑えられ、実力のある会社を使った方がいいのではないか」と東京電力の中で話題になりました。そこでどんどん上流に行くチャンスが生まれました。
──それで元請けとしての道が開けたのですね。
インフラ老朽化と向き合う覚悟~見えない危機を、見える解決へ
インフラ業界の課題
──今、インフラ関連の老朽化が問題になっていますが、インフラ業界の現状や、課題についてお聞かせください。
飛鳥氏:
皆さんもご存じの通り、下水道にしても埼玉県八潮市の道路陥没事故が起きました。2012年には笹子トンネルでも天井板落下事故が起きたようにインフラの老朽化がとにかく社会課題として進んでいます。
そのインフラ老朽化の課題を我々は解決していかなければなりません。
けれども、少子化の影響でどんどん人口も減少しています。人も減っていくのに、やることが多くなっているというのは、これはもう大変な問題ですよね。全部やりきることができない。そういう社会課題を抱えているのがこの業界だなと思っています。
我々は、今までのやり方とはちょっと違う形にしないと、これを解決できないと思っています。
久保田氏:
建設業界って、なかなかベンチャー的なものが立ち上がりづらいんです。規制で守られている反面、いわゆる“聖域”があって、そこが新しい挑戦を阻んでいる。
たとえば、日本のゼネコンは世界で活躍していますが、海外のゼネコンが日本に入ってくることはほとんどない。建設業法などの仕組みで、外国企業を受け入れにくくしているんです。
こうした閉鎖的な風土は、ベンチャーにも向かい風になります。挑戦したくても、その土壌が整っていないんですよね。
多様な人材育成と新たな解決アプローチ──その建設業法の制約の中で、リライフメンテグループがインフラ老朽化にどう立ち向かうのでしょうか。
飛鳥氏:
我々も作業員不足という問題を抱えているので、人材の採用と育成に力を入れています。
久保田氏:
建設業も「○○士」と呼ばれる資格や職人の世界です。今やIT化が進み、人を介さなくてもできる仕事が増えていますが、我々の仕事は人にしかできないものなんです。たとえば、理容室でロボットに髭を剃られると不安を感じるように、微妙な息づかいや繊細な判断ができるのは人間だけです。そうした「人でなければできない仕事」に真摯に向き合い、人材育成や技術継承に取り組んでいることが高く評価されています。
さらに、技術者の育成は日本人だけではなく、英語も堪能なフィリピンの若者にも技術を伝えています。これは我々にしかできない取り組みで、自社のフィリピンの学校で人材育成を行っています。フィリピンは若者が多く経済成長も著しい一方、日本では若年層の確保が難しくなっています。
そのため、このような他社にはできない外国の若者の育成が今お客様に評価されています。
飛鳥氏:
その保守的にもつながるけれども、建設業が守られているだけに、業者さんも待ちの姿勢がすごい多く見受けられます。口を開けていれば仕事が降ってくるぐらいの感覚の会社が多いように感じます。
本来ならば、お客様が困っていることを見つけ出して対処するソリューション的な動きが必要です。
我々の鉄塔事業では、まさにそれに近いことができていて、東京電力の鉄塔に対する困りごとを我々が感度良く受け取ってきて、それに合った対策を取っています。そういうところは他社ではやれていない、我々だからこそできている部分ですね。
今の東京電力の送電グループとはそういうリレーションがきっちりできていて、我々が「クリティカルに応答する会社」として存在する。ここが我々の成長の一番の鍵です。
──それはもうある種強みっていうことですよね。
久保田氏・飛鳥氏:
そうですね。
現場力こそ、企業文化の真髄
『千葉の名工』と技術継承の取り組み
──ところで、平世美装では久保田元治さんが『千葉の名工』(千葉県知事が千葉県内で就業する卓越した技能者を表彰する制度)として表彰されています。
久保田氏:
私の一つ年下ですか、私のいとこにあたります。
当時、千葉県では台風被害により鉄塔や電柱の倒壊が相次いでいました。こうした状況を受け、熊谷知事(現職)は水道・道路・電気を含むインフラの重要性を痛感し、防災意識を一層高められています。『名工』の表彰は狭き門ですが、千葉県の中心送電設備を維持補修している功績が評価され名工として表彰されました。インフラ分野から名工が選出されるのは前例のない異例の快挙です。
──そうした高い技術を継承し、現場に生かされているのですね。
久保田氏:
私が社員に常に言っていることは、「お客様の困っていることが最大のビジネスチャンス」ということです。お客様が何を困っているか、その困っていることに応えるのが重要なことなのです。
「どれだけ仕事をもらえるか」「どれだけ利益が出せるか」を追う人が多い業界ですが、私たちはそうではなく、まずお客様の課題を徹底的にお聞きします。
「どの鉄塔に問題があるのか」「どの工程でつまずいているのか」「必要な工具や検討中の工法は何か」、こうした疑問をクリアにしたうえで、「それならこう解決しましょう」「こう直してみましょう」「新しい道具を開発しましょう」と提案します。
お客様の困りごとをすべてヒアリングして、解決すべく取り組んでいきます。
だからライバルが何をしているかではなく、お客様に目を向け、お客様に寄り添い続ければ、成果はお客様自身が判断してくださいます。周りの外野の話は聞かなくていい、お客様目線でいればいいんです。それで現場力が培われていくのです。
お客様へ寄り添い、共に進む新たな挑戦
──そういったお客様に寄り添って考えることで、人が人を呼び、お客様も職人も次々と集まってくるということでしょうか。
久保田氏:
まさに、人に寄り添う気持ちで仕事を続けていると、昔話の桃太郎で犬や猿、キジが集まってくるように、インフラ技術を継承する仲間たちも自然と集まってくると感じます。
飛鳥氏:
建設業ではありますが設備を扱う仕事なので、結局は“人”が原動力です。うちも東京電力とお仕事することが多いので、彼らが抱える社会的な課題というのを見ていくと、自ずと何をしたらいいか見えてきます。
東京電力の大きな課題として変電所の水害対策がありますが、今はそのお手伝いをしています。
塗装だけではなく、変電所が洪水になった時に水が入らない城壁のような防護壁を作ったりもしています。
それもただ作るだけではなくて、洪水時に水位がどこまで上がるかをシミュレーションし、万一浸水したときには壁内に溜まった水を安全に排出する仕組みも含め、下請け会社やいろんな会社と連携して作っていっています。
下請け会社も当然初めての工事になるので、我々がこういうやり方で、ああいうやり方でといろいろ話し合いをし、研究開発しながら進めていっています。
──あらたな挑戦も果敢にされているのですね。
“孤軍奮闘”から“共創連携”へ~ホールディングス創設と未来構想
連携の経緯とシナジー
──もともとは平世美装もinfratも、いわゆる競合だったと思うのですが、どういった理由でリライフメンテグループとして手を組むことになったのでしょうか。
飛鳥氏:
やはり、一社だけで立ち向かっていくものではないと思っています。infratでも同業他社だけでなく、メーカーや下請けを含めた企業連携を重視してきました。連携を深めるほど、お互いの強みが何倍にも膨らむんですよね。若いときからこの考えは変わっていません。そういう意味で平世美装と組むことで、もっと強くなれると感じて、私の方から久保田さんにアプローチしました。
──それで、一緒にやられてやるようになったのですね。
今回リライフメンテホールディングスを立ち上げて「これは本当に良かった。相乗効果があったな」という事例をお伺いしてもよいでしょうか。
久保田氏:
まさにスケールメリットですね。平世美装とinfratがタッグを組むことによって、圧倒的な規模の工事量を安全にこなせる安心感をお客様にお届けできます。
「このグループなら大規模な案件でも問題なくやってくれるだろう」と信頼していただけるのが、最大の強みだと思います。膨大な工事量を安全に仕上げられるという一番の安心をお客様に与えられることは2社が手を組んだことによる相乗効果です。
共創メリットと新規パートナーへのメッセージ
──「リライフメンテグループで一緒にやりましょう」と他の企業様にお声掛けしているかと思いますが、新たにグループに加わられる企業様に伝えたいメッセージはありますか。
久保田氏:
我々の専門は塗装で、橋や鉄塔、建物などに関わっています。ただ、塗装という業種以外もインフラのメンテナンスには必要になります。世の中には多くのインフラがたくさんありますが、まだそこを全体的にカバーできていません。でも、そこをカバーできてこそのインフラメンテナンスだと考えています。
先ほどの東京電力の防災工事も塗装ではなく土木の仕事に当たりますが、そういった新しい分野で我々が補いきれない新技術とかを融合していける新しいパートナーが加わってくれると、新しいシナジーが生まれるのではないかと思っています。今の我々で専門的なことを一から勉強・研究開発するのも大事かもしれないですが、そういったパートナーに賛同いただいて加わっていただけたら、同じような相乗効果があるし、我々もお手伝いすることによって、お互い吸収して得られることも増えていくと思います。
飛鳥氏:
建設業で解決できる社会課題というものをここまで真剣に考えているグループは他にはないと自負しています。ぜひ私たちと同じテーブルに座って、共にその取り組みに参加していただけると嬉しいですね。
──塗装だけではなくて、いろんな事業を行う会社さんに賛同いただけると良さそうですよね。
飛鳥氏:
我々の持ってない技術が加われば、さらに解決する近道になりますよね。
久保田氏:
少し違う側面の話ですが、日本では補修・保全の時代に入っていますが、東南アジアや発展途上国では新規インフラの需要が高く、当社も海外の新規建設案件に積極的に取り組んでいます。最近ではカンボジアやウズベキスタン、ナイル川などで工事を実施し、日本から職人を派遣できない場合でも、フィリピンで育成した英語対応可能な技術者が現地で指導にあたっています。
──日本国内だけでなく、海外にも視野を広げられていて素晴らしいです。
人への想いと組織づくり~“人”で始まり、“人”が残る
多様性重視の育成プログラム
──日本では少子化で人手不足が深刻化する中、社員や職人と良好な関係を築くために、どのような点を意識していますか。
飛鳥氏:
今は日本人だけでなく外国人も受け入れて育成しています。さまざまなバックグラウンドの人が集まるようになってきたので、多様性は強く意識しています。これまで建設業界では、一人の現場担当者がすべてを担うのが当たり前でしたが、今は分業制に移行し、未経験者でも活躍できる仕組みを整えています。
ただ、それでも最終的には「人の手」が必要な仕事なんです。AIに置き換えられる仕事が増える中で、我々の仕事は逆に職人の価値がどんどん上がっていると感じます。
鉄塔に登って作業する職人なんて、相当な技術が求められますし、年収2,000万円でもまったく不思議じゃない。それくらい誇れる仕事だと思っています。
久保田氏:
少しずつ流れは変わってきていると感じることもあります。昔の固定観念というか、ネガティブなイメージに囚われない若者が増えてきているみたいですね。
最近はマグロ漁船で働くことが話題になって、結構給料もいいし、世界中あちこち行けるし、若いマグロ漁師が増えているらしいと。いいマグロが採れれば陸にあがった時は豪遊できるだろうし(笑)。
そういう若者が増えてきているというのは徐々に時代が変わってきていますよね。
飛鳥氏:
確かに鉄塔塗装がそんなイメージになると違うかもしれないですよね。
職人の誇りとコミュニティ醸成
久保田氏:
あとは、最近社内の交流にも力を入れていまして。例えばフットサルチームを作ったり、休みの日にはみんなで遊びに行ったり。社員は130名くらいいるのですが、忘年会になると98%は参加してくれます。もちろんこれは強制ではないです!
「飯行くぞ!」となると、他の会社だと「プライベートが……」と言って嫌がる若手社員も多いようですが、うちの場合は逆で5人だと思っていたら11人に増えちゃったということがよくあります(笑)。もちろん飲み代は親方持ちですし、「いやいや行きたくないなぁ、でも社長だから……」というのもあまりないように感じます。
楽な仕事はないし、どんな仕事でも厳しい。だから人間関係が辛いと、仕事をやっていけない。仕事は厳しくても、人間関係が楽しければ、支えになりますよね。
──社員のみなさんが良い人間関係に恵まれているので、厳しい仕事でも頑張れるのですね。ちなみに、塗装のことも建設のことも全く知らない人が入社しても大丈夫なのでしょうか。
飛鳥氏:
もちろん問題ありません。今、人材育成の仕組みを作っていっています。資格支援として、該当の資格に合格すれば30万円をあげるとか、そういった仕組みもありますね。でも、実際は現場に入って学んでいく方が多いですかね。技術は重要ですが、内容的にはそんなに難しい仕事ではないと思います。
ハードルは高くはないので、目指してもらえればいい。仕事は私たちがしっかりと教えますので。
次世代に繋ぐ現場からの未来
未来を創る仕事の意義
──では、次の世代の人たちに何か伝えたいこと、託したいことなど教えていただけますでしょうか。
飛鳥氏:
インフラってやっぱり国そのものだと思いますし、生活そのものだと思います。そういう意味では、我々が今手を動かしていることというのは、まさに未来を作っているんだな、と実感しています。そういう仕事ですので、非常に価値あるものですよと言いたいですね。
我々の手の動かし方次第では未来も変わっていくよという、そのくらい責任感のある仕事ですので、是非若い人たちにこの仕事を目指してもらえればなと思っています。
久保田氏:
平世美装だけで言えば、東京電力の鉄塔塗装を日本で一番手掛けています。その東京電力は世界の電力会社の中では一番。なので、我々のやっていることは日本一を通り越して世界一だったわけです。
日本一になれる、世界一になれるというのは信頼を確かなものにしますし、未来への希望にもつながると思います。
鉄塔や橋に限らず、幅を広げて日本一、世界一を達成したい、そういうふうに考えております。
一社完結と補修を超える“付加価値”
──ありがとうございます。
最後にお聞きしたいのですが、少子高齢化やインフラの老朽化など、変化が大きい社会の中で、会社として、また業界としてどんな未来を目指していますか。
久保田氏:
お客様が我々に感じている一番のメリットであり、期待されているのは、鉄塔に関して「管理」から「調達」「教育」「アフターメンテナンス」まで一貫して任せられることです。今後はそれをもっとわかりやすい形で残していきたいです。例えば塗装について機材の情報から技術継承や教育など全てが整っているような塗装の総合施設を整備したいと考えています。教育プログラムや設備をそこに集約し、お客様からの信頼を一層高められる組織づくりと設備構築に取り組んでいければなと思っています。
それと、東京電力からドローンを活用した鉄塔の総合的な調査診断をすべて我々の方でやってほしいと依頼をもらっています。今までは東京電力独自でやっていたのですが、人材不足と人件費削減の問題もあり、なかなか予算が取れない。なので、アウトソーシングできる会社に設計業務や調査診断などすべてを任せたい。それが、お客様の一番求めているところです。このグループがワンストップですべてをこなせるようにならねばなりません。
飛鳥氏:
そうですね。それと、今は補修していく仕事をやっていますけれども、補修ってただ直すだけになってしまう。もちろんそれは当然のことですが、今度はそこに付加価値をつけていくことを考えています。
例えばメンテナンスしやすい形のものを作れれば、我々の補修の仕事はやらなくて済むじゃないですか。そういう思考を使った付加価値を付ける提案をできるようにしたいですね。
補修だけではなく付加価値もつけることができるグループに育てて、リライフメンテホールディングスに頼めば、すべて一貫して行える、それが目指す姿です。
新しい思考で、今までにない提案もできるような企業グループになっていきたいですし、いろいろな分野の企業が新しいパートナーとしてグループに加わってくれると嬉しいですね。